第一章 不被看见的闪光
操場の隅で、梶裕也はパクッとボールを叩いていた。陽光が彼の瘦せた腕を斜めに走らせ、肌が焼ける匂いが漂ってきた。だが、その気持ちはまるで風船に突かれたような、軽飘飘で浮遊していた。 「うん……またね、先輩」 梶裕也は気が散っていただけのランニングを終え、わざわざ誤魔化しながら、その場を立ち上がった。彼の前では、七塁手としての最高のパフォーマンスを目指す先輩の山田珠市が、全力で飛び込む姿が見えた。その胴体を打ち抜くボールは、パームプレートで弾かれ、勢いよくセンター方向へ飛んでいった。 「やった!」 珠市は野趣を爆発させ、一瞬でスタンドから姿を消した。振り上げたスペードの握手を振るが、梶裕也はほとんど見過ごしてしまう。カーブをかけて反対向きにタッチした。その動きは、まるで…アピールしようとしているような気がしてならなかった。 「あの……」 梶裕也の口元を少しきしめた。だが、山田は全く気づかない。彼は前述のオーバーライドをきっかけに、今度は左翼へと疾走し、低いストライクをマウント。あとは、一瞬の呼吸を置いて、満面の笑みで jump up した。その瞬間、球は、あっという間にタッチされるはずだった。しかし、球はまだまだ trail していた。 「あーー!」 珠市は、ふっと小さな悲鳴を上げた。野球のレールでは、あんな情境も許されない。だが、その言葉は、梶裕也の頭では、まるで遠くの雷の轟きのように鳴ってきた。練習の観客席にいたのは、彼一人だけ。そして、彼はこの瞬間を、まるで夢を見ているかのように、一瞬だけ元気出していなかった。 この空気を読んで、 moeten だが、時機を見逃してしまう感情。やっぱり「気」って難しいんだ。 梶裕也は、少し遠くに立ち止まった。そこから見て、珠市はもう、笑顔でインフィールドへ戻っていった。その動きは、完全に帰宅行き。それでいいんだ、と。 「また来る」 珠市の背中を、梶裕也は深く見送った。








